町家リノベーションの宿とは
町家リノベーションの宿とは、古い町家を改築、改装して、ホテルとしてよみがえらせた施設のことを指します。歴史ある町家の建物はその存在だけでもドキドキしますね。そんな古い建物に現代のトレンドやおしゃれな家具、最新家電を融合させて建物がもつ価値を生まれ変わらせています。
一言で町家と言ってもその当時の使われ方は様々で、建物の特徴から感じ取ることができます。
西津湊ふるかわについて
2023年4月にオープンした西津湊ふるかわの歴史は江戸時代に遡ります。江戸時代の慶應元年(1965年)に建てられ、小浜藩で最も成功した北前船船主・古河屋で北前船の船頭をしていた古川屋惣兵衛の居宅を改装しました。壁が厚く漆喰が塗り込まれ、立派な木が柱や梁に用いられるなど重厚な造りからは北前船の繁栄が感じられます。その歴史、文化財、建造物の価値が認められ国の登録有形文化財に登録されました。
外観の特徴
若狭瓦
屋根の瓦にはいくつかタイプがあります。代表的なものとして「陶器瓦」と呼ばれる釉薬によって色を付けた粘土瓦。「いぶし瓦」と呼ばれる瓦の素地自体を燻化し銀色になった粘土瓦があります。
寒冷地では積雪や凍結に強いことから釉薬を使った「陶器瓦」が使われることが多い傾向にありますが、若狭瓦は釉薬を使用しない無釉の「いぶし瓦」です。
ただ、北海道小樽の街の屋根瓦として若狭瓦が使用されていたことがわかっており、品質の良さが証明されています。
がったり
西津湊ふるかわは当時、商店として使われていたため、町家の軒下に軸吊されている縁台が設置されていたことが建物の構造から判明しました。既存のがったりが当時のがったりを再現したものです。普段使わないときは引き上げて収納するようになっており、狭い空間のなかでもできる限り広く空間を使用したいと考えた当時の工夫が見て取れます。
大戸・くぐり戸
日中の商売をしている時や大きな荷物を運ぶ時は大戸を開き、夜間の人の出入りなどには防犯の目的から大戸の一部に設置されているくぐり戸を使っていました。出入り口を小さくすることで室内の温度をなるべく一定に保つ効果もあります。
宿に入る際は頭をぶつけないように気をつけてお入りください。
内装の特徴
箱階段
町家の構造上、階段はどうしても場所を取ることから隅に追いやられる存在でした。ほとんどの町家では、できるだけ省スペースで上り下りをするために、階段は急勾配であり幅も踏み板も狭く作られています。
ふるかわは建物自体が広いため箱階段の踏み板も広く設計されています。広い空間を有する町家ならではの箱階段です。
火袋
おくどさん(竈門のこと)を置いた場所に設けられた吹き抜け空間です。ふるかわの火袋は圧巻の高さを誇ります。屋根まで吹き抜けになっているので炊事による熱や煙などを逃がすことが目的の構造となっています。小屋組の梁の行きかう造形美は職人技の見せ所です。ぜひ、天井を見上げてみてください。
ちんくぐり
ふるかわ2階の床の間には「狆潜り(ちんくぐり)」が設置されています。床の間のわきを仕切る壁の下の方が吹き抜けになっている構造のことを狆潜りと呼びます。別名「犬潜り」とも呼ばれています。 狆は奈良時代に朝鮮半島から聖武天皇に贈られてきた中国の犬です。 江戸時代には各地の大名がこぞって飼育していたようです。
そんな狆潜りが町家に設置されていることから、北前船の船頭の生活ぶりが見てとれます。今はお子様に人気のスポットになっています。
笏谷石を使った土台
ふるかわには笏谷石が土台に使われれいます。笏谷石といえば福井県の中でも嶺北と呼ばれるエリアが産地として有名です。小浜市は嶺南といわれるエリア。同じ福井県といえどかなり距離が離れています。嶺北エリアで採れた笏谷石を嶺南エリアまで北前船に乗せて持ってきたものです。
当時の北前船が日本中の物流に必要な存在だったことが見て取れます。